いまだ記憶に新しい大規模な地震のマンション被害状況について確認しましょう。
阪神・淡路大震災(1995年1月17日)
マグニチュード7.3の直下型地震により、死者6,434人を出す大災害となりました。
特に、震源地付近ではマンションやビルの主要構造部が大破し、倒壊する等甚大な被害が発生しました。室内では家具が倒れるだけでなく、電気製品などが宙を飛び、ガラスが割れる等、室内に止まることすら厳しいほどの状況でありました。
教訓として、各地で建物の耐震診断や耐震補強を進めようという声が上がりました。特に、耐震基準について建築基準法が現行のものに改正される1981年6月1日より以前に建てられた、いわゆる「既存不適格(旧耐震基準)」の建物に被害が集中した点を踏まえ、耐震化が急務であることが再認識されました。
東日本大震災(2011年3月11日)
東日本大震災は、津波被害が大きく、広範囲に揺れが長く続き、大きな余震が続いたことが特徴でした。マンションの被害としては、共用廊下やバルコニーの非耐力壁(玄関ドアや窓など開口部のある壁など)が損傷し、玄関ドアや窓サッシ等開口部の変形により閉じ込められたケースも多くみられました。一方で、高層階では長周期振動による揺れで家具の倒壊等の被害が発生しました。また、設備の被害として、高置水槽・受水槽・設備配管の破損、貯湯式電気温水器の転倒による漏水事故が多く発生しています。さらに、エレベータ-の停止やライフライン(電気、ガス、水道)の停止や液状化被害により排水管が破損し、長期間トイレが使用できない状況がありました。
熊本地震(2016年4月14日)
断層が近いという立地が大きく影響し、2回の最大震度7の前震と本震により、甚大な被害をもたらしました。熊本市内のマンションの約3棟に1棟の割合(32%)で「小破」以 上の被害を受けており、修繕が必要と想定される「中破」以上のマンションは全体の7%を超えており、「大破」「倒壊」判定のマンションも併せて0.8%もありました。「被害無」と判定されたマンションは4棟に1棟程度しかなく、「軽微」な被害も全体の約半数で確認されています。これは「東日本大震災」と比較しても、東日本大震災での「被害無」の割合は50.5%に対して、熊本地震では24.1%となっています。東日本大震災は津波被害があり、その被害の内容は大きく異なりますが、地震本体の影響による建物への損傷は、熊本地震の方がかなり大きかったといえます。
これらの大震災では、地震のタイプや被害の広がりなどは異なりますが、マンションにおける被害の想定や設備等の損傷による生活への影響は予測できるものです。近いうちに起きるとされる大規模地震に対して、これらを教訓とした『日頃からの備え』をすることで被害を最小限に止めることが重要です。